リード文 山崎豊子の小説『白い巨塔』は、その重厚なテーマと骨太な人間ドラマで、時代を超えて何度も映像化されてきました。この壮大な物語を支える上で、音楽が果たす役割は非常に大きいものです。
特に、田宮二郎主演の1978年版、唐沢寿明主演の2003年版、そして岡田准一主演の2019年版と、リメイクされるたびに、その時代を象徴する音楽が選ばれ、ドラマの緊迫感や登場人物の運命を深く印象づけてきました。
この記事では、特に反響の大きかった2003年版の主題歌と、不朽の名作とされる1978年版のメインテーマに焦点を当て、その音楽的な背景と魅力について掘り下げます。
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唐沢寿明版(2003年)の象徴的な音楽:加古隆のメインテーマとヘイリーの歌声
2003年にフジテレビ開局45周年記念番組として制作されたテレビドラマ『白い巨塔』は、その音楽の構成が非常に特徴的です。メインテーマ(オープニング)と、エンディングテーマにそれぞれ異なる楽曲が起用され、視聴者に強い印象を残しました。
緊迫感を高めた加古隆のメインテーマ
ドラマのオープニングや劇伴音楽を担当したのは、作曲家でピアニストの加古隆氏です。加古氏は、ジャズ、クラシック、現代音楽の要素を融合させた独自の作曲形式を確立しており、「ピアノの詩人」あるいは「ピアノの画家」と称されることがあります。
2003年版のメインテーマはインストゥルメンタル(歌なしの演奏曲)として使用されました。特に、このドラマの音楽ではエレキギターが用いられ、大きな話題を呼びました。
加古氏のキャリアにおいて、「映像の世紀」のテーマ曲「パリは燃えているか」などが有名ですが、この『白い巨塔』の音楽では、重厚なオーケストレーションの中に現代的かつ鋭いサウンドを取り入れることで、財前五郎の野心や医療界の現実を表現したのかもしれません。
世界的な名曲を起用したヘイリーの「アメイジング・グレイス」
このドラマのエンディングテーマとして使用され、特に注目を集めたのが、ニュージーランド出身の歌手ヘイリー(ヘイリー・ウェステンラ)が歌う「アメイジング・グレイス(Amazing Grace)」でした。
彼女のこの楽曲は、2003年7月発売のアルバム『ピュア』に日本限定のボーナストラックとして収録されていたものでしたが、同年10月にドラマが放送開始されると、その清らかで力強い歌声が話題となり、ヘイリーが日本で広く知られるきっかけとなりました。
「アメイジング・グレイス」に込められたメッセージ
「アメイジング・グレイス」は、讃美歌の中でも最もよく知られた曲の一つであり、アメリカ合衆国では「第二の国歌」とまでいわれるほど愛唱されている曲です。
奴隷貿易への悔恨から生まれた詩
この曲を作詞したのは、18世紀のイギリスの牧師ジョン・ニュートン(John Newton, 1725年 – 1807年)です。ニュートンは若い頃、黒人奴隷を輸送する「奴隷貿易」に深く関わって富を得ていました。
彼の人生の転機は、22歳の時に船が嵐に遭い、転覆の危機に瀕した際、心の底から神に祈ったことだとされています。その後も奴隷貿易には従事したものの、やがて彼はその行いを深く悔い改め、1772年に牧師として「アメイジング・グレイス」を作詞しました。
歌詞には、奴隷貿易に関わったことへの深い悔恨と、それにもかかわらず赦しを与えた神の愛への感謝が歌われています。この曲は、単なる美しい讃美歌というだけでなく、「素晴らしき神の恵み」「感動をもたらす恩寵」という意味が込められた、深い懺悔のメッセージを持っています。
著名な日本人アーティストによる歌唱の傾向
2000年代以降の日本国内において「アメイジング・グレイス」といえば、ヘイリーの楽曲に加えて、本田美奈子.さんの歌唱も代表的なものとして扱われることが多い傾向があります。本田さんはクラシカル・ソプラノ・シンガーとしてデビューした2003年のアルバムに同曲を収録しており、彼女の死後には売り上げが急増したという経緯があります。
また、彼女が生前病室で歌ったア・カペラ音源が公共広告機構(現:ACジャパン)の骨髄バンク支援キャンペーンのCMに使用されるなど、この曲が持つ「命」や「希望」といったテーマが、多くの人の心を動かすきっかけになったといえるでしょう。
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田宮二郎版(1978年)の不朽のテーマ:渡辺岳夫の壮大なオーケストレーション
テレビドラマとして強い印象を残している田宮二郎主演の1978年版『白い巨塔』は、そのメインテーマの重厚さも語り草になっています。
渡辺岳夫が作り上げたハイブリッド構造
1978年版のテーマ音楽を作曲したのは、渡辺岳夫氏です。渡辺氏は昭和のテレビドラマやアニメ音楽の大御所であり、フランスでクラシック音楽を学んだ経歴から、彼の楽曲はしばしば緻密なオーケストレーションを特徴としています。
このテーマ曲は、クラシックのシンフォニーのような印象を与えつつも、ベースラインがコード感を、ドラムがリズム感を支配し、その上に弦楽器のメロディーが乗るという、ポピュラー音楽とクラシック音楽を融合させたハイブリッドな構造を持っていると分析されています。
壮大なスケール感の秘密
このメインテーマは、わずか38小節という短い曲ですが、非常に良く出来た構成が評価されています。音楽的な特徴としては、曲の調性(キー)が「C」から「F」へ、さらに「Bb」へと、4度上に次々と転調していく進行が用いられています。この転調の仕方が、聴く人に雄大なスケール感を感じさせる要因の一つです。
また、楽曲全体が、特定の不安定なコードを避け、安定感のあるダイアトニックコードを中心に構成されているため、まるで強固な大理石の柱が立ち並ぶ宮殿を思わせるような、堂々とした安定感のある響きを生み出しているのでしょう。
このテーマ曲があまりに素晴らしかったため、ドラマ冒頭の「教授の総回診」のシーンが、曲に合わせて延長されたという逸話も残っています。これは、音楽がドラマの演出に影響を与えた、珍しい例といえるかもしれません。
音楽家としての自信の現れ
渡辺岳夫氏は、このメインテーマのメロディーを心底気に入っていたようで、後にアニメ『機動戦士ガンダム』の劇伴音楽の中で、このメロディーラインをほぼそのままのコード進行で再利用した「セルフカバー」を行っていることも知られています。
クラシック音楽で、主題(テーマ)とその変奏が何度も登場するように、渡辺氏は自信作であるこのメロディーを多岐にわたる作品に展開させたのでしょう。
リメイク版における音楽の変遷
『白い巨塔』は、時代が変わるごとに、その音楽の表現方法も変化しています。
• 1978年版(渡辺岳夫):人間が演奏する弦楽器を中心とした、アナログ時代の重厚で威厳あるオーケストラサウンドが中心でした。
• 2003年版(加古隆):クラシック、ジャズ、現代音楽を融合させつつ、エレキギターやシンセサイザーを取り入れた現代的なオーケストラサウンドと、若きソプラノ歌手による国際的な名曲を組み合わせることで、ドラマに新たな奥行きを与えました。
• 2019年版(兼松衆):テレビ朝日開局60周年記念作品として制作されたこのリメイク版では、兼松衆氏が音楽を担当し、現代のドラマに合わせた新たなサウンドトラックが提供されています。
まとめ
『白い巨塔』の物語は、権力欲、嫉妬、そして医療現場の葛藤という普遍的なテーマを描いていますが、それらの感情の機微を、歴代の音楽は見事に捉えてきました。
田宮二郎版で聴かれた渡辺岳夫氏の力強いテーマ曲は、当時の病院という組織が持つ絶対的な権威と、財前五郎の不屈の野心を表現しているように感じられます。一方、2003年版で耳にした加古隆氏の鋭いメインテーマと、ヘイリーが歌う「アメイジング・グレイス」の組み合わせは、野心的な行動の裏側にある、救いと悔恨のテーマを深く掘り下げたのかもしれません。
それぞれの時代、それぞれの演出家が、そのテーマの核心に迫るために、最もふさわしい「音の設計図」を敷いてきたのでしょう。テレビドラマを彩る名曲を改めて聴き直してみると、作品が持つ奥深さや、時を超えて受け継がれる普遍的な問いかけが、より鮮やかに感じられるのではないでしょうか。
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