TBS系列の「金曜ドラマ」枠で1983年から1997年にかけて放送され、パートIVまでシリーズ化された青春群像劇『ふぞろいの林檎たち』。学歴差別や恋愛、進路に悩みながらも、不器用に懸命に生きる若者たちの姿が描いた本作は、脚本家・山田太一さんの代表作の一つとして、今なお多くの人々の心に残る名作です。
このドラマの象徴とも言える主題歌は、全シリーズを通して一貫して、サザンオールスターズの「いとしのエリー」が使用されました。この楽曲は、ドラマの「共感」を呼ぶ世界観をより深く印象づける、重要な役割を担っていたと言えるでしょう。
全シリーズ共通の主題歌は「いとしのエリー」
『ふぞろいの林檎たち』シリーズは、1983年のパートIから始まり、1985年のパートII、1991年のパートIII、そして1997年のパートIVまで続きましたが、その全ての作品で主題歌に採用されたのが、サザンオールスターズの「いとしのエリー」(Invitation)です。
この楽曲は、サザンオールスターズが1979年3月25日に3作目のシングルとして発売したもので、それまでの陽気でコミカルなイメージを覆す、彼らにとって初めてのバラードを表題曲として発表した作品でした。当時のレコード会社側からは「方向性が定着してきた時期に、バラードは時期尚早だ」と反対の声もあったそうですが、結果的にはこの曲がサザンオールスターズを国民的なスーパースターの座へと押し上げるきっかけの一つになったと評価されています。
ドラマの放送期間中にも、楽曲の再評価の動きが見られました。シリーズ完結編である『ふぞろいの林檎たち IV』(1997年)の放送に合わせて、この曲は特例として再発売されています。
時を超えて愛される「いとしのエリー」の魅力
「いとしのエリー」は、発売当時から高い人気を誇り、オリコン週間シングルランキングでは最高2位だったものの、TBSの音楽番組『ザ・ベストテン』では7週連続で週間1位を獲得しました。累計売上枚数は72.8万枚(オリコン調べ)を記録し、1992年に他のヒット曲が出るまでは、サザンオールスターズの中で最高の売上枚数でした。
この曲の優しく切ないメロディは、ドラマが描く、学歴コンプレックスや人生の挫折といった厳しい現実に直面しながらも、ひたむきに生きる若者たちの心情と見事に重なり、視聴者の心に響きました。ドラマの登場人物が、世間が求める「規格」(ふぞろいな林檎) から外れながらも、愛情や友情を求める姿は、「いとしのエリー」の温かい響きによって包み込まれていたと言えるでしょう。
ちなみに、歌詞の「エリー」という名前の由来については、当時のインタビューで桑田さんが冗談で語った実姉やエリック・クラプトン説があったそうですが、桑田さんご自身は後に「エリー」という言葉の響きの良さから決めたと明かされています。また、楽曲の間奏に入っている女性の笑い声は、メンバーの原由子さんの声です。
ドラマを深く彩ったサザンオールスターズの楽曲群
『ふぞろいの林檎たち』シリーズの音楽面の大きな特徴は、主題歌だけでなく、劇中のBGMや挿入歌にも、サザンオールスターズの楽曲が数多く使われていたことです。これは、一人のアーティストの楽曲を複数採用した、当時としては珍しい試みであったという声もあります。
シリーズを通して挿入歌として採用されたサザンの楽曲には、以下のようなものがあります。
- 「栞のテーマ」
- 「My Foreplay Music」
- 「Ya Ya (あの時代を忘れない)」
- 「いなせなロコモーション」
- 「私はピアノ」
- 「シャ・ラ・ラ」
- 「ボディ・スペシャル II (BODY SPECIAL)」
- 「Bye Bye My Love (U are the one)」
これらの楽曲は、登場人物の心情や特定のシーンに寄り添って使われ、ドラマの世界観を形作る重要な要素となっていました。例えば、「私はピアノ」は水野陽子(手塚理美さん)のテーマ、「My Foreplay Music」は岩田健一(時任三郎さん)のシーンで多く流れていた傾向が見られます。
特に、このドラマが放送されていた1980年代前半は、後に流行する華やかなトレンディドラマとは異なり、地に足の着いた社会の現実を描く作風でした。サザンオールスターズの音楽が、そうした登場人物たちの現実的な悩みや、仲間との共同性 を優しく表現する役割を担い、視聴者からの強い「共感」を引き出す一助となったと言えるでしょう。
まとめ
ドラマ『ふぞろいの林檎たち』の主題歌は、全パートを通じて一貫してサザンオールスターズの「いとしのエリー」が採用されています。
この名曲は、単にドラマの顔となっただけでなく、挿入歌として多数使用された「栞のテーマ」や「My Foreplay Music」といったサザンの楽曲群とともに、山田太一さんが描いた「ふぞろい」な若者たちの、葛藤と成長の物語を音楽の力で深く印象づけることになりました。
もしあなたが、ドラマの空気感を再び感じてみたいと思われたら、ぜひオープニングで流れる「いとしのエリー」はもちろん、彼らの青春の様々な側面に寄り添ったサザンの名曲たちを聴きながら、当時の彼らの気持ちに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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