1978年から1979年にかけてTBS系列の「水曜劇場」で放送されたドラマ『ムー一族』は、下町の足袋屋「うさぎ屋」を舞台にしながら、生放送や多彩なゲスト、そしてドラマの枠を超えたコミカルな展開が話題となった伝説的なホームコメディです。この型破りなドラマを象徴していたのが、非常に個性的な楽曲の数々でしょう。
特に、郷ひろみさんと樹木希林さんによるデュエット曲は、当時の社会現象ともなりました。この記事では、『ムー一族』のオープニングを飾った主題歌から、劇中を彩った記憶に残る挿入歌まで、その音楽の魅力に迫ります。
『ムー一族』のオープニングテーマは「暗闇のレオ」
『ムー一族』の正式なオープニング曲として使用されたのは、クリエイションの「暗闇のレオ」です。
この曲は竹田和夫さんが作曲を担当されており、ロックバンドであるクリエイションによるインストゥルメンタルナンバーとして、ドラマのスタートを印象づけました。実際、第11話ではオープニングでクリエイションがこの曲の生演奏を披露したという記録も残っています。
また、前作『ムー』(1977年放送)のオリジナル・サウンドトラックには、荒木一郎さんが作曲、森本太郎さんが編曲を手掛けたインストゥルメンタル曲「ムーのテーマ」が収録されています。この「ムーのテーマ」は、シタールを用いたラーガ調ロックという、非常にエキゾチックで心和む曲調が特徴的で、サウンドトラックのジャケットデザインを手がけた横尾忠則さんのイメージとも重なる楽曲とされています。シリーズの根幹をなすテーマ曲として、こちらも重要な一曲です。
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社会現象を巻き起こした挿入歌「林檎殺人事件」
異色デュエットが生んだ大ヒット曲
『ムー一族』の音楽で最も広く知られているのは、郷ひろみさんと樹木希林さんが歌ったデュエット曲「林檎殺人事件」でしょう。
この曲は、ドラマの中のコントコーナーの挿入歌として登場しました。作詞は阿久悠さん、作曲・編曲は穂口雄介さんが担当されています。
この異色の組み合わせによるコミカルな楽曲は大きな話題を呼び、1978年8月にはTBSの音楽番組『ザ・ベストテン』で4週連続1位に輝く大ヒットとなりました。当時の年間ベストテンでも第10位に入るほどの人気を博しました。
「フニフニフニフニ」に込められた遊び心
「林檎殺人事件」の歌詞は、タイトルとは裏腹にコミカルな内容となっています。特に印象的なのが、曲中に繰り返される「フニフニフニフニ」というフレーズです。
プロデューサーの久世光彦さんによると、この言葉は「不二」(二つとない、実際は一つ)を意味する言葉遊びであり、当時のアイドルである郷ひろみさんと、個性派女優である樹木希林さんの凸凹なペアを、雌雄の区別がないような存在として捉えるコンセプトが込められていたとされています。作詞家の阿久悠さんは、久世さんからコンセプトを聞いた際、「そこまで出来ているなら自分で書けばいい」と答えたというエピソードも残っていますが、久世さんの遊び心が日本中の視聴者に届いた一例と言えるでしょう。
この曲はドラマの最終回でも披露され、スタジオに集まった出演者全員が大合唱して幕を閉じるという、幸福感あふれるラストを飾りました。
記憶に刻まれたその他の名曲たち
哀愁漂う「世迷い言」
『ムー一族』には、他にもドラマのシーンと深く結びついた印象的な楽曲が多数使用されていました。
挿入歌の中でも特に異彩を放っていたのが、日吉ミミさんが歌った「世迷い言」です。
作詞は阿久悠さん、作曲は中島みゆきさんが手がけており、その歌詞には「世の中バカなのよ」という、インパクトのあるフレーズが含まれています。この「世の中バカなのよ」は、逆から読んでも同じになる回文であり、劇中で郷ひろみさんが発した台詞から着想を得て作られた曲とされています。
劇中では、この歌が流れると、割烹「ひろみ」にいる客が一度突っ伏し、サビの「世の中バカなのよ」の部分で顔を上げて一緒に歌うというユニークな演出があり、強いインパクトを残しました。
恋の逃避行を彩る「しのび逢いのテーマ」
清水健太郎さん演じる長男・健太郎が、人妻である一条ゆかりと不倫をするシーンでは、「しのび逢いのテーマ」という楽曲が使われました。
川口真さんが作曲したこの曲 は、健太郎とゆかりがキャメルのレインコートを着て、雨や霧の中で「しのび逢う」という、劇的な場面を演出する上で重要な役割を果たしました。この楽曲が流れるたびに、二人のロマンチックでどこか背徳的な雰囲気が強調されていたと言えるでしょう。
前作から引き継がれた「お化けのロック」
『ムー一族』は前作『ムー』の続編ですが、前作の挿入歌だった郷ひろみさんと樹木希林さんのデュエット「お化けのロック」も引き続き劇中で使用されました。
「お化けのロック」は作詞を阿木燿子さん、作曲を宇崎竜童さんが担当されており、この曲が初めてリリースされたのは1977年9月1日(郷ひろみさんの23枚目のシングル)とされています。当時の視聴者からは、『ムー』のオープニングのイラストが「異常に怖かった」という意見も見受けられ、この曲もまた、ドラマの持つ独特のシュールな世界観を支える要素の一つだったと言えるでしょう。
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『ムー一族』の楽曲は、単なる背景音楽や主題歌にとどまらず、ドラマの進行やコント、そして登場人物の個性を際立たせる「装置」のような役割を担っていました。
オープニングのロックインスト「暗闇のレオ」から、社会現象となったコミカルな「林檎殺人事件」、哀愁とユーモアが混在する「世迷い言」まで、その音楽性の多様さは、プロデューサー久世光彦さんが目指した型破りで自由なテレビドラマの精神を体現していたのかもしれません。
時代を超えて語り継がれる『ムー一族』の面白さの裏には、こうした魅力的な音楽の存在があったからこそ、私たちの記憶に深く刻まれているのではないでしょうか。音楽を聴き直すと、当時のドラマの型破りな空気感が蘇ってくるように感じられます。
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